若かりし日々の記録(14)
- 2016/11/09
- 21:02
前置きこのシリーズの最終篇です。この記事に書いたことは、50年近く前の1968~1969年のフランスの様相です。過ぎ去った時代の一コマとして読んでください。現代のフランスでは、テレビもインターネットもスマホも日本と同じくらい普及しています。テレビを見る時に室(へや)を暗くする人なんて、もう何十年も前にいなくなりました。映画館で野次を飛ばす人も滅多にいません。本文(『ふらんす』1969年3月号に載った「フランス便り」...
若かりし日々の記録(13)
- 2016/11/06
- 05:15
(『ふらんす』1969年3月号に載った「フランス便り」その4)寒さfroidアルザス地方の気候は、冬の間も、暖かくなったり寒くなったりを繰り返す(*)。(*) これが初めての冬でしたから、この年には、これ以上のことは書けませんでした。「冬の間に何度も小規模な雪融けが起こってはまた厳しい寒さがぶり返し、春になると山の高い所に積もった雪が一気に融けて洪水を起こす」ことをまだ知りませんでした。しばらく好い天気が続いて雪がか...
若かりし日々の記録(12)
- 2016/11/03
- 19:59
(『ふらんす』1969年3月号に載った「フランス便り」その3) お菓子フランス人学生などから自宅での食事への招待を受けた時、一つだけ辛(つら)いことがある。それは、dessert (*)に大量の甘いお菓子を出されること(**)。(*) 元はフランス語ですが、英語を経由して日本語に入って「デザート」となった言葉です。元のフランス語と英語とは、発音は違いますが、綴りも意味も同じです。(**)「大量であること」と「甘過ぎること」が重な...
若かりし日々の記録(11)
- 2016/10/27
- 18:31
(『ふらんす』1969年3月号に載った「フランス便り」その2) 講義開始12月は、緯度の高さをしみじみと感じる月である。朝8時、空はまだ暗い。窓から外を眺めると、どの家にも灯りが点(つ)いている。曇った日は、9時になってもまだ暗い。正午の太陽は、まるで秋の夕方のよう。晴れた日には、長い長い影が差す。3時、夕焼けが始まり・・・4時、黄昏(たそがれ)・・・5時、夜が来る。雪の日は、闇の迫るのが早い。午後の講義は...
若かりし日々の記録(10)
- 2016/10/22
- 19:53
(『ふらんす』1969年3月号に載った「フランス便り」その1) ストラスブール大学日誌11月4日。1967~68年度学年末試験終了。本来なら6月に行なうものなのだが、événements de mai (*)のため繰り延べになっていた。(*)「1968年5月の大騒動」のことです。日本の似非フランス通が、何人も、愚かにも「パリ五月革命」と呼び習わしています。憫(あわ)れです。ブログ記事〈「パリ五月革命」って何 ?〉をご覧ください。11月中旬。試験の結果...
若かりし日々の記録(9)
- 2016/10/18
- 19:19
(『ふらんす』1969年2月号に載った「フランス便り」その3) Restau. U. (*)Restau.u. (**)とは学生言葉で「学生食堂restaurant universitaire」の略である。(*)(**)『ふらんす』に載った記事では、なぜか「Rest.U.」という誤った綴りになっています。なお、今では、「restau. U.」がさらに短くなり、「R.U.」と書くのが普通になっています。発音は、[ʁy]です。Cité U.は、cité universitaireすなわち大学の寮のこと。Cho. U.はchor...
若かりし日々の記録(8)
- 2016/10/15
- 18:58
(『ふらんす』1969年2月号に載った「フランス便り」その2) 国境の町ストラスブールは、国境frontièreの町。僕が生まれる少し前までは、ドイツ領だった。Palais Universitaire (*)の正面にはGœtheの銅像が立ち(**)、そのゲーテがよく登ったという大聖堂の塔がこの町を象徴する。今も年取った人々はドイツ語をよく理解し、一歩町を離れると強いアルザス訛りが聞こえる(***)。(*) ストラスブール大学の一番古い建物の名前で...