日本語のラテン文字転写(17) 問題点の纏め
- 2020/12/23
- 20:25
日本語のラテン文字転写に纏(まつ)わる問題を取り上げたシリーズの最終篇です。但し、読者の皆様からご質問があれば、補遺編を掲載する可能性はあります。難点の一覧このシリーズの最初の記事「総論」で示した「難点の一覧」をもう一度書きます。全て記事にして掲載しましたから、この記事ではリンクを貼ります。全体を俯瞰するのが楽になりますね。「ウ列の母音の表記」 「無声化母音の表記」 「ガ行鼻濁音の表記」 「シャ行音...
日本語のラテン文字転写(16) 音調を表記するか否か
- 2020/11/19
- 20:00
(「音調の表記」の項の「必要な場合」という下位項目に追記があります)今日の二本目の記事です。掲載予定の記事がたくさんあるところへ緊急掲載の記事が重なり、〈日本語のラテン文字転写〉シリーズの記事の掲載も、二ヶ月以上、間が空いてしまいました。第16篇をお届けします。後は「纏め」の篇が残るだけです。音調の重要性標準語のような有音調言語では、音調によって区別の出来る語が多数あります。例えば、「資料」(高低)と「...
日本語のラテン文字転写(15) 促音「っ」の表記
- 2020/09/02
- 19:58
「促音」の音価謂わゆる「促音」も、「撥音」と並んで、日本語独自の音韻単位です。仮名では「つ、ツ」を小さくした「っ、ッ」という文字で表わしますが、その音価は、いろいろあります。当ブログの記事〈日本語・音韻論(5)「っ」〉 で詳述していますので、未読の方は是非お読みください。日本語学習者のための「促音」のラテン文字転写初歩の日本語学習者のために、平仮名とカタカナが十分に身に着くまでの間の一時的な便宜とし...
日本語のラテン文字転写(14) 撥音「ん」の表記
- 2020/07/28
- 17:46
日本語で「ん、ン」で書き表わす音韻単位は、音声学的に分析すると、複雑な様相を呈しています。【一拍分の長さの鼻音であり、高低どちらかの音調を担う】ことが条件なのですが、【異音は、母音であることもある。子音のこともある。両者の組み合わせである場合もある】という特異な性質があるため、「撥音」という音韻単位の無い言語を話し読み書きする人にとっては、転写するのも正しく発音するのも至難のことなのです。多種多様...
日本語のラテン文字転写(13)「長音」の表記
- 2020/07/17
- 20:42
「長音」って何?当ブログの記事〈「こおり」と「こうり」〉で説明したことですが、現代日本語で「二つ続いたア」と「長音のアー」「二つ続いたイ」と「長音のイー」「二つ続いたウ」と「長音のウー」「二つ続いたエ」と「長音のエー」「二つ続いたオ」と「長音のオー」の間に音声学上の違いはありません。同記事の中程の記載を自己引用します。#####現代日本語では、語中の母音連続が自由です。言い換えると、/aa/、/ai/、/aɯ/、/a...
日本語のラテン文字転写(12) 拗音の表記
- 2020/07/07
- 19:05
「拗音」って何だったっけ「拗音」は、普通は、イ列の仮名にヤ行の仮名を添えたものを指します。現代語では、一般に、ヤ行の仮名を小さくして「きゃ」「しゅ」「ちょ」「ぢゃ」「びゅ」「ぴょ」のように表記します。時には、イ列以外の仮名にヤ行またはア行の仮名を添えたものを指すこともあります。「ティ」「ディ」「デュ」「スィ」「スュ」などがその例だと言う人がいるのですが、万人が認めるわけではありません(*)。(*) F爺は...
日本語のラテン文字転写(11) ワ行音の表記
- 2020/06/20
- 21:39
しばらく間が空きましたが、「日本語・ラテン文字転写の難点」のカテゴリーの記事を続けます。今日は、「ワ行音」の番です。歴史的仮名遣いの「ワ行音」歴史的仮名遣いの「ワ行音」は、「わゐ□ゑを」「ワヰ□ヱヲ」です。「ゐ、ヰ」は、古い時代には[wi]という発音の拍だったはずです。現代語では、[i]ですから、ア行の「い、イ」と全く同じ発音です。(*)「ゑ、ヱ」は、古い時代には[we]という発音の拍だったはずです。一時期[je]と...