移動ド唱法と固定ド唱法

ドレミファ・・・にもいろいろあります。

〈「移動ド唱法」という術語は、誰でも知っているわけではない〉
ということが「106」さんからのコメント(*)で分かりました。

(*) ブログ記事「日本音楽を貶める教官」にお寄せ下さった三通目の、2016年5月16日付けの、コメントです。

だとしたら、その対語の「固定ド唱法」も知らない人が多いということになります。

このブログでは、五線譜を表示することは出来ません。階名のドレミファソラシを使って、何とか説明を試みます。

「106」さんのコメントの一部を引用します。角(かく)括弧(= [ ])で括った部分は、F爺が補いました。

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[固定ド唱法なら]ハ長調はドレミファソラシド、ト長調はソラシドレミファ# ソ、ニ長調はレミファ#ソラシド#レ、イ長調はラシド#レミファ#ソ#ラ、となるところを、
例えばニ長調では主音のレ、を[移動ド唱法で]ド、と見なせば、ドレミファソラシド、と聞こえてくる、と、これは習ったような気もします。

言葉としては知りませんでしたが、考え方は一応教わっていたのかな、と思います。
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「106」さんのご推察の通りです。「106」さんの音楽の先生は、術語を使わずに、固定ド唱法で教えていたのです。そして、折に触れて、やはり術語は使わずに、「移動ド唱法なら長調は全てドレミファソラシド、短調は全てラシドレミファソラになる」ことも教えていたのです。

相対音感(*)があって楽器奏者ではない人が歌の旋律を覚える時は、無意識のうちに移動ド唱法を用いています。

(*)「相対音感」は、「絶対音感」の対語です。絶対音感のある人は、楽音を一つ聞いて、すぐにその音の絶対的な高さが判ります。相対音感の人には、それは不可能です。絶対音感のある人は、非常に稀です。ブログ記事「絶対音感」をご覧ください。

例えば北原白秋作詞・山田耕筰作曲の「この道」の旋律を移動ド唱法で書くとこうなります。

「ソドレ/ミーミーーラ/ソミレミ/レードー」

手近に楽器が無くても、殆(ほとん)どの人に、間違い無く
〽この道はいつか来た道・・・
の旋律だと判ります。

同じ曲を固定ド唱法で書くと、原曲はホ長調ですから、こうなります。

「シミファ#/ソ#ーソ#ーード#/シソ#ファ#ソ#/ファ#ーミー」

嬰記号(= #、シャープ)だらけですから、楽器の演奏に慣れていない人には「読み解くのが難しい」と言うよりも「何のことか分からない」と言ったほうが早いでしょう。

F爺が中学校で使った教科書では、この曲は変ホ長調に移調してありました。バスの人には「ああーーそうだよーー」の冒頭の「あ」に当たる「ミ」の音は高過ぎて歌えませんから、当然の教育的処置です。この曲の変ホ長調に移調した旋律を固定ド唱法で書くとこうなります。

「シ♭ミ♭ファ/ソーソーード/シ♭ソファソ/ファーミ♭ー」

音楽科教師は、変声期の男子生徒用に、もっと低いニ長調やハ長調に移調して伴奏してくれるのが常でした。

どんな調性に移調しても、生徒は全員が相対音感の持ち主でしたから、「同じ旋律」に聞こえるのです。何の問題も無くみんなで一緒に歌えました。

相対音感の人が「自分は楽器を弾かない」状態で旋律を覚えるには、移動ド唱法のほうが固定ド唱法よりも遥かに便利なのです。

ピアノを弾き慣れた相対音感の人は、移動ド唱法で楽譜を覚えれば、どんな調性にも瞬間的に対応して移調できます。

F爺は、作曲や編曲をするときには固定ド唱法を用いますが、一旦書き上げた楽譜は必ず移動ド唱法で読み直すことにしています。そうしておくと、コンサートで歌っている途中で何かの拍子に音程が少し下がってしまっても、問題無く指揮と歌唱を続けることが出来るのです。

さて・・・この記事、解りやすい説明になっているでしょうか。ご意見をお聞かせください。