語族神話(前)
- 2014/03/21
- 00:58
トルコ共和国では、F爺が足繁く通っていた頃(= 2003年7月初めまで)、国策として小学校から大学まで、
「*ウラル・アルタイ語族というものが存在し、トルコ語はその主要な一員だ」
と嘘を教えていました。
「*フィンランド人もトルコ人である」
「*ハンガリー人もトルコ人である」
と教えていたのです。
「*朝鮮語と日本語もウラル・アルタイ語族と近縁である」従って
「*日本人もトルコ人の親戚だ」
と、少なくとも末端の教師は、教えていました。
反論する者がいると、
「トルコ共和国とトルコ人を貶める陰謀だ」
と言っていました。
F爺のように「『*ウラル・アルタイ語族』説なんて、とっくの昔に棄て去られた作業仮説で、今時、まともな研究者は見向きもしない」と知っている者にとっては、「物言えば唇寒き」国でした。その後、2014年までに状況が変わったという検証可能な情報は得ていません。
トルコ国民にとっては、建国以来ずっと国を挙げて代々そう教え込まれているため、それが根底的に間違っていると認識するのは大変なことです。
F爺が二度目に国外追放されてから、「少しずつ状況が変わって来ている」という未確認情報がときどき聞こえるようになっています。しかし、今のところ、はっきりと例えば「○○大学の□□教授がこういうことを発表して投獄されずに済んでいる」と言う実名の報道者からの 検証可能な情報は入手していません。
日本語とトルコ語とハンガリー語の基礎語彙の一部を比べてみましょう。トルコ語は、「テュルク諸語」の一員です。ハンガリー語は、フィン・ウゴル諸語とサモイェード諸語を併せた「ウラル語族」の一員です。現代語では、以下の通りです。
日本語 トルコ語 ハンガリー語
ひと(つ) bir egy
ふた(つ) iki kettő
み(っつ) üç három
よ(っつ) dört négy
いつ(つ) beş öt
む(っつ) altı hat
なな(つ) yedi hét
や(っつ) sekiz nyolc
ここの(つ) dokuz kilenc
とお on tíz
め(目) göz szem
はな(鼻) burun orr
くち(口) ağız száj
は(歯) diş fog
みみ(耳) kulak fül
かみ(髪) saç hajszál
て(手) el kéz
あし(足) ayak láb
食べる ye(mek) eszik
歩く yürü(mek) rálép
「一体どこが似てるの !?」というのが初めてこの比較表を見る人の正直な感想ではないでしょうか。
「驚かない」と言う人は、すでにトルコ語とハンガリー語を習ったことがあるか、さもなくば比較言語学の素養があって、この三言語が相互に無関係だと予(あらかじ)め知っている人でしょう。
トルコなどの「ウラル・アルタイ語族教信者」は、
「違いがあるのは、後から変わったんだ」
と頑(かたく)なに主張します。
そんなことを言う人に限って、日本語やハンガリー語の200年前、400年前、600年前・・・の語彙や音韻や文法のことは何も知りません。
「ふた(つ)」が[puta-]に遡ること、「とお」が[töwo]に遡ること、「鼻」と「花」は音調が違うこと、「食べる」よりも「食ふ」のほうが古いことなども、全然知りません。それどころか、テュルク諸語の実態さえ全然知りません。学校で
「*カザフ語やウズベク語は、トルコ語の方言だ」
と教え込まれているのです。
「*ウラル・アルタイ語族」作業仮説のうち、西半分の「ウラル語族」だけが成立しています。東半分の「アルタイ諸語」は、明確にテュルク諸語、モンゴル諸語、ツングース諸語の三群に分かれます。それぞれのグループ内では同系の証明が出来ていますが、グループ間の同系の証明はありません。「未証明だ」と言う人もいますが、F爺は「証明の糸口が見つからない」と表現します。
共通の語彙と見做し得るものがあるのは事実なのですが、借用である可能性の方が高いし、偶然の類似でもあり得ます。
現状では、「テュルク語族、モンゴル語族、ツングース語族の間に系統論とは無関係な共通点(*)がいくぶん観察できる程度」なのです。
(*)「系統論とは無関係な共通点」 : 語順などについて類型分類した場合の共通点と借用による共通語彙または偶然の類似による擬似共通語彙のことです。
現今では「*ウラル・アルタイ語族」神話は、トルコ共和国の支配下の地域(*)以外にはほとんど生き残っていませんが、「ウラル」部分を取り去った「*アルタイ語族」神話は、他の国々にも未だにはびこっています。
(*) トルコ軍占領下の「北キプロス・トルコ共和国」でも学校で教えている可能性が高いのですが、検証可能な情報は得ておりません。
この「語族神話」シリーズには、この後、中篇と後篇、それに「語族神話と母音調和」の四篇を予定しています。母音調和についての考察は、最後になります。数日お待ちください。
「*ウラル・アルタイ語族というものが存在し、トルコ語はその主要な一員だ」
と嘘を教えていました。
「*フィンランド人もトルコ人である」
「*ハンガリー人もトルコ人である」
と教えていたのです。
「*朝鮮語と日本語もウラル・アルタイ語族と近縁である」従って
「*日本人もトルコ人の親戚だ」
と、少なくとも末端の教師は、教えていました。
反論する者がいると、
「トルコ共和国とトルコ人を貶める陰謀だ」
と言っていました。
F爺のように「『*ウラル・アルタイ語族』説なんて、とっくの昔に棄て去られた作業仮説で、今時、まともな研究者は見向きもしない」と知っている者にとっては、「物言えば唇寒き」国でした。その後、2014年までに状況が変わったという検証可能な情報は得ていません。
トルコ国民にとっては、建国以来ずっと国を挙げて代々そう教え込まれているため、それが根底的に間違っていると認識するのは大変なことです。
F爺が二度目に国外追放されてから、「少しずつ状況が変わって来ている」という未確認情報がときどき聞こえるようになっています。しかし、今のところ、はっきりと例えば「○○大学の□□教授がこういうことを発表して投獄されずに済んでいる」と言う実名の報道者からの 検証可能な情報は入手していません。
日本語とトルコ語とハンガリー語の基礎語彙の一部を比べてみましょう。トルコ語は、「テュルク諸語」の一員です。ハンガリー語は、フィン・ウゴル諸語とサモイェード諸語を併せた「ウラル語族」の一員です。現代語では、以下の通りです。
日本語 トルコ語 ハンガリー語
ひと(つ) bir egy
ふた(つ) iki kettő
み(っつ) üç három
よ(っつ) dört négy
いつ(つ) beş öt
む(っつ) altı hat
なな(つ) yedi hét
や(っつ) sekiz nyolc
ここの(つ) dokuz kilenc
とお on tíz
め(目) göz szem
はな(鼻) burun orr
くち(口) ağız száj
は(歯) diş fog
みみ(耳) kulak fül
かみ(髪) saç hajszál
て(手) el kéz
あし(足) ayak láb
食べる ye(mek) eszik
歩く yürü(mek) rálép
「一体どこが似てるの !?」というのが初めてこの比較表を見る人の正直な感想ではないでしょうか。
「驚かない」と言う人は、すでにトルコ語とハンガリー語を習ったことがあるか、さもなくば比較言語学の素養があって、この三言語が相互に無関係だと予(あらかじ)め知っている人でしょう。
トルコなどの「ウラル・アルタイ語族教信者」は、
「違いがあるのは、後から変わったんだ」
と頑(かたく)なに主張します。
そんなことを言う人に限って、日本語やハンガリー語の200年前、400年前、600年前・・・の語彙や音韻や文法のことは何も知りません。
「ふた(つ)」が[puta-]に遡ること、「とお」が[töwo]に遡ること、「鼻」と「花」は音調が違うこと、「食べる」よりも「食ふ」のほうが古いことなども、全然知りません。それどころか、テュルク諸語の実態さえ全然知りません。学校で
「*カザフ語やウズベク語は、トルコ語の方言だ」
と教え込まれているのです。
「*ウラル・アルタイ語族」作業仮説のうち、西半分の「ウラル語族」だけが成立しています。東半分の「アルタイ諸語」は、明確にテュルク諸語、モンゴル諸語、ツングース諸語の三群に分かれます。それぞれのグループ内では同系の証明が出来ていますが、グループ間の同系の証明はありません。「未証明だ」と言う人もいますが、F爺は「証明の糸口が見つからない」と表現します。
共通の語彙と見做し得るものがあるのは事実なのですが、借用である可能性の方が高いし、偶然の類似でもあり得ます。
現状では、「テュルク語族、モンゴル語族、ツングース語族の間に系統論とは無関係な共通点(*)がいくぶん観察できる程度」なのです。
(*)「系統論とは無関係な共通点」 : 語順などについて類型分類した場合の共通点と借用による共通語彙または偶然の類似による擬似共通語彙のことです。
現今では「*ウラル・アルタイ語族」神話は、トルコ共和国の支配下の地域(*)以外にはほとんど生き残っていませんが、「ウラル」部分を取り去った「*アルタイ語族」神話は、他の国々にも未だにはびこっています。
(*) トルコ軍占領下の「北キプロス・トルコ共和国」でも学校で教えている可能性が高いのですが、検証可能な情報は得ておりません。
この「語族神話」シリーズには、この後、中篇と後篇、それに「語族神話と母音調和」の四篇を予定しています。母音調和についての考察は、最後になります。数日お待ちください。