熊本市の慈恵病院が「母親の名前を空欄にして出生届を出すのは罪か」と法務局に質問状 : アンケートの纏め(1)
- 2022/01/29
- 20:27
当ブログの記事〈熊本市の慈恵病院が「母親の名前を空欄にして出生届を出すのは罪か」と法務局に質問状〉でお願いしたアンケートの纏めを二篇に分けて試みます。
コメントでご回答をお寄せくださった、Ventさん、「883s」さん、「dakusui」さん、「106」さん、
メールなどでご意見をお知らせくださった皆様、
誠にありがとうございます。
ご回答のうち「dakusui」さんからのものは、F爺との数回の交信に発展しました。それは、第二篇で紹介します。今日の記事では、それ以外の方々のご回答だけを纏めます。
アンケートの質問
アンケートの質問は、次の通りでした。
#####
質問 一
【慈恵病院は、この質問状を、独自の「内密出産」を企画する時点で法務局に提出し、
本省にも問い合わせさせた上で確かな返答を得るべきだった】
とF爺は思います。皆様は、いかがお考えでしょうか。
質問 二
出生届を出してもらえない場合、この赤ちゃんは、「無戸籍児」になります。
その不利益は、計り知れません。これは、人道上、正しいことでしょうか。
#####
ご回答
Ventさん
*****
質問 一
【慈恵病院は、この質問状を、独自の「内密出産」を企画する時点で法務局に提出し、本省にも問い合わせさせた上で確かな返答を得るべきだった】
私もそう思います。慈恵病院は問い合わせをしていたのかと愚考します。法務官僚はこういう問題には「頬被り」します。それゆえの強行突破だったのかもしれません。
質問 二
【出生届を出してもらえない場合、この赤ちゃんは、「無戸籍児」になります。その不利益は、計り知れません。これは、人道上、正しいことでしょうか】
→人道上極めて大きな問題です。今の日本にはすでに1万人以上の無戸籍児がいると予想されています。由々しき問題ですが、解決法がゼロではないようです。
なお、この児が長じて自分の親を知る方法がなくなるのは極めて大きな問題だと思います。
*****
「883s」さん
(一通目と二通目の組み合わせ)
*****
F爺さん
質問 一
この件については、F爺さんの記事を拝読してから、経緯に関する記事や資料を集めていたので、回答のために添付いたします。
まず、内密出産の実施にあたって、調べた限りでは、熊本市は2回の自粛要請を出しています。
(「調べた限りでは」となっている理由は、熊本市がWebサイトで公開している資料が2021年6月までしかなく、それ以降はWeb検索で探すしか手段が無いためです)
1回目:2020年8月24日
内密出産は「法令に抵触する可能性」 熊本市が自粛要請(朝日新聞)
2回目:2021年11月11日
内密出産「法抵触の恐れ」 慈恵病院に熊本市が回答書 実施控えるよう要望(熊本日日新聞)
それに対し、熊本市は2021年5月17日に厚生労働省に質問状を送っています。
「こうのとりのゆりかご」第5期検証報告書
熊本市から国への要望書等
この資料の129ページより、厚生労働省からの回答の一部を引用します。
> しかしながら、当該病院が考える内密出産には、児童の権利に関する条約に謳われている子どもの出自を知る権利が十分保障されていると判断しうるのか等の課題がある。
> ■予期せぬ妊娠に関する様々な課題は、一地方公共団体・一民間病院で解決できるものではなく、国の責任において検討されるべき課題であり、 これらの課題解消に向けた更なる体制整備を早急に進める必要がある。
つまり、F爺さんが懸念なさっている匿名出産について、厚生労働省は認知していて、その上で「一地方公共団体・一民間病院で解決できるものではな」いと判断をしています。
その回答を踏まえた上で、熊本市は2回目の自粛要請をし、そして「日本初の「匿名出産」になるかもしれない件」に繋がる訳ですから、慈恵病院はかなり無理のある進め方をしていると感じます。
前述の通り、2021年6月から現在までの経緯を完全に調べられた訳ではありませんが、厚生労働省が考えを変えたのであれば大きなニュースになりますから、記事が見つからないということは変わっていないのでしょう。
そのため、アンケートの回答は「同意です」と致します。
質問 二
出生届を母親が匿名[という]状態で[は]出せないことが分かった場合に、名前を明記して[出生届を出して]も良いと事前に母親の承諾を得ていたのであれば分かりますが、そうでない場合[= 法令に牴触すると判ったので出生届を出さないことにするの]は、人道上正しくないと思います。
*****
「106」さん
*****
質問 一について
日本ではまだ、「内密出産」に関する法整備が十分ではない以上、「内密出産」を受け入れる前に、出来る限りの法的根拠を揃えておくべきであり、
「産まれてから考える」ようなことをしてはいけないと思います。
質問 二について
生まれた子供を意図的に「無戸籍児」とすることは、人道に外れた行為だと思います。
*****
「883s」さんの三通目のコメント
*****
F爺さん
> 【慈恵病院は、この質問状を、独自の「内密出産」を企画する時点で法務局に提出し、本省にも問い合わせさせた上で確かな返答を得るべきだった】
の件について、そうしなかった理由の手がかりとなりそうな記事が見つかりました。
「出自を問えるのも、命があればこそ」、熊本・慈恵病院
上記のリンクは不思議な仕様になっていて、Google検索の結果から開いた時には記事が読めるものの、直接リンクを開くと最初の500文字分しか見られません。
なのでGoogle検索の結果に表示されるURLを添付していますが、もし記事の全てが読めない場合は、Google にて記事の表題を検索していただければと思います。
> 蓮田健氏は、現行の戸籍法の範囲内で、内密出産が日本でもできるのではないか、と見る。「父母の氏名がない出生届を行政が受理してくれるか」を熊本法務局戸籍課に尋ねたところ、「分娩に立ち会った医師からの届け出の受理を、市役所が断った場合、職権記載で何らかの対応はできる」との回答だったからだ。
2019年時点では、熊本法務局戸籍課は「父母の氏名がない出生届を行政が受理してくれるか」という問いに対し「何らかの対応はできる」と回答したそうですね。
その後、2020年8月24日に熊本市からの1度目の自粛要請ですから、企画当初は熊本法務局戸籍課に問い合わせたことで「現行の戸籍法の範囲内で、内密出産が日本でもできるのではないか」と考えていたものの、途中から問題が浮上し、それを解決する前に独自の内密出産制度を始めた、という可能性の方が高い様です。
注意点として、記事中の院長である蓮田太二氏は2020年に亡くなっています。現院長の蓮田健氏は息子です。
「赤ちゃんポスト」創設者が逝去 「子捨てを助長する」の声 それでも続けた理由
余談ですが、「ドイツ 内密出産制度」でGoogle検索をすると、フランスとドイツの「赤ちゃんポスト」、匿名出産制度、内密出産制度について調査したPDFが三件見つかったので少しだけ読みましたが、どれも「子どもの出自を知る権利」を侵害することについては触れているものの、子が生涯苦しむという具体的な問題については言及していませんでした。
私もF爺さんのブログ記事を読んで初めて知りましたが、もしこれらのPDFだけを読んでいたら、重要な問題だと気づくには時間がかかっていたと思います。
とはいえ、一度気づけば大半の人が容易に想像出来ることだと思います。
慈恵病院は、匿名出産を望む妊婦とは何度も直接対話をしているでしょうが、その一方で、日本にいながら匿名出産制度で生まれて苦しんでいる人と会話する機会を得ることは中々難しいでしょうから、この問題について意識が向きづらくなっている可能性がある様に思います。
*****
F爺の返信
#####
「883s」さん
お知らせ、ありがとうございます。F爺のパソコンからは、コメントに
貼ってあるURLをクリックして全文が読めました。環境によって
反応の違うことは、時々ありますね。
>慈恵病院は、匿名出産を望む妊婦とは何度も直接対話をしているでしょうが、
その一方で、日本にいながら匿名出産制度で生まれて苦しんでいる人と
会話する機会を得ることは中々難しいでしょうから、
この問題について意識が向きづらくなっている可能性がある様に思います。
【慈恵病院は、匿名出産制度で生まれて来て苦しんでいる人と対話する
機会が無かったため、匿名出産のもたらす悲劇の存在に未だに意識が向いていない】
可能性は、確かにあると思います。
慈恵病院に
【妊婦の救済のために匿名出産の便宜を図ることは、一方では生まれた子への重大な人権侵害でもある】
という事実を知らせる手立ては無いものでしょうか。
#####
ここまでの纏め
第一問には、皆様が賛成のご意見。但し、「諸手を上げて」というわけではない。
第二問にも、皆様が「正しくない」と賛成。
ところが、「883s」さんからの三通目のコメントが届きました。
【慈恵病院は、最初、熊本法務局戸籍課から「分娩に立ち会った医師からの[父母の氏名の無い出生]届け出の受理を、市役所が断った場合、職権記載で何らかの対応はできる」との解答を得ていたそうだ】
→【そのため実行することにした後で問題があるらしいと分ったけれども、突き進むことにしたらしい】
とのことです。
第二篇に続きます。
コメントでご回答をお寄せくださった、Ventさん、「883s」さん、「dakusui」さん、「106」さん、
メールなどでご意見をお知らせくださった皆様、
誠にありがとうございます。
ご回答のうち「dakusui」さんからのものは、F爺との数回の交信に発展しました。それは、第二篇で紹介します。今日の記事では、それ以外の方々のご回答だけを纏めます。
アンケートの質問
アンケートの質問は、次の通りでした。
#####
質問 一
【慈恵病院は、この質問状を、独自の「内密出産」を企画する時点で法務局に提出し、
本省にも問い合わせさせた上で確かな返答を得るべきだった】
とF爺は思います。皆様は、いかがお考えでしょうか。
質問 二
出生届を出してもらえない場合、この赤ちゃんは、「無戸籍児」になります。
その不利益は、計り知れません。これは、人道上、正しいことでしょうか。
#####
ご回答
Ventさん
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質問 一
【慈恵病院は、この質問状を、独自の「内密出産」を企画する時点で法務局に提出し、本省にも問い合わせさせた上で確かな返答を得るべきだった】
私もそう思います。慈恵病院は問い合わせをしていたのかと愚考します。法務官僚はこういう問題には「頬被り」します。それゆえの強行突破だったのかもしれません。
質問 二
【出生届を出してもらえない場合、この赤ちゃんは、「無戸籍児」になります。その不利益は、計り知れません。これは、人道上、正しいことでしょうか】
→人道上極めて大きな問題です。今の日本にはすでに1万人以上の無戸籍児がいると予想されています。由々しき問題ですが、解決法がゼロではないようです。
なお、この児が長じて自分の親を知る方法がなくなるのは極めて大きな問題だと思います。
*****
「883s」さん
(一通目と二通目の組み合わせ)
*****
F爺さん
質問 一
この件については、F爺さんの記事を拝読してから、経緯に関する記事や資料を集めていたので、回答のために添付いたします。
まず、内密出産の実施にあたって、調べた限りでは、熊本市は2回の自粛要請を出しています。
(「調べた限りでは」となっている理由は、熊本市がWebサイトで公開している資料が2021年6月までしかなく、それ以降はWeb検索で探すしか手段が無いためです)
1回目:2020年8月24日
内密出産は「法令に抵触する可能性」 熊本市が自粛要請(朝日新聞)
2回目:2021年11月11日
内密出産「法抵触の恐れ」 慈恵病院に熊本市が回答書 実施控えるよう要望(熊本日日新聞)
それに対し、熊本市は2021年5月17日に厚生労働省に質問状を送っています。
「こうのとりのゆりかご」第5期検証報告書
熊本市から国への要望書等
この資料の129ページより、厚生労働省からの回答の一部を引用します。
> しかしながら、当該病院が考える内密出産には、児童の権利に関する条約に謳われている子どもの出自を知る権利が十分保障されていると判断しうるのか等の課題がある。
> ■予期せぬ妊娠に関する様々な課題は、一地方公共団体・一民間病院で解決できるものではなく、国の責任において検討されるべき課題であり、 これらの課題解消に向けた更なる体制整備を早急に進める必要がある。
つまり、F爺さんが懸念なさっている匿名出産について、厚生労働省は認知していて、その上で「一地方公共団体・一民間病院で解決できるものではな」いと判断をしています。
その回答を踏まえた上で、熊本市は2回目の自粛要請をし、そして「日本初の「匿名出産」になるかもしれない件」に繋がる訳ですから、慈恵病院はかなり無理のある進め方をしていると感じます。
前述の通り、2021年6月から現在までの経緯を完全に調べられた訳ではありませんが、厚生労働省が考えを変えたのであれば大きなニュースになりますから、記事が見つからないということは変わっていないのでしょう。
そのため、アンケートの回答は「同意です」と致します。
質問 二
出生届を母親が匿名[という]状態で[は]出せないことが分かった場合に、名前を明記して[出生届を出して]も良いと事前に母親の承諾を得ていたのであれば分かりますが、そうでない場合[= 法令に牴触すると判ったので出生届を出さないことにするの]は、人道上正しくないと思います。
*****
「106」さん
*****
質問 一について
日本ではまだ、「内密出産」に関する法整備が十分ではない以上、「内密出産」を受け入れる前に、出来る限りの法的根拠を揃えておくべきであり、
「産まれてから考える」ようなことをしてはいけないと思います。
質問 二について
生まれた子供を意図的に「無戸籍児」とすることは、人道に外れた行為だと思います。
*****
「883s」さんの三通目のコメント
*****
F爺さん
> 【慈恵病院は、この質問状を、独自の「内密出産」を企画する時点で法務局に提出し、本省にも問い合わせさせた上で確かな返答を得るべきだった】
の件について、そうしなかった理由の手がかりとなりそうな記事が見つかりました。
「出自を問えるのも、命があればこそ」、熊本・慈恵病院
上記のリンクは不思議な仕様になっていて、Google検索の結果から開いた時には記事が読めるものの、直接リンクを開くと最初の500文字分しか見られません。
なのでGoogle検索の結果に表示されるURLを添付していますが、もし記事の全てが読めない場合は、Google にて記事の表題を検索していただければと思います。
> 蓮田健氏は、現行の戸籍法の範囲内で、内密出産が日本でもできるのではないか、と見る。「父母の氏名がない出生届を行政が受理してくれるか」を熊本法務局戸籍課に尋ねたところ、「分娩に立ち会った医師からの届け出の受理を、市役所が断った場合、職権記載で何らかの対応はできる」との回答だったからだ。
2019年時点では、熊本法務局戸籍課は「父母の氏名がない出生届を行政が受理してくれるか」という問いに対し「何らかの対応はできる」と回答したそうですね。
その後、2020年8月24日に熊本市からの1度目の自粛要請ですから、企画当初は熊本法務局戸籍課に問い合わせたことで「現行の戸籍法の範囲内で、内密出産が日本でもできるのではないか」と考えていたものの、途中から問題が浮上し、それを解決する前に独自の内密出産制度を始めた、という可能性の方が高い様です。
注意点として、記事中の院長である蓮田太二氏は2020年に亡くなっています。現院長の蓮田健氏は息子です。
「赤ちゃんポスト」創設者が逝去 「子捨てを助長する」の声 それでも続けた理由
余談ですが、「ドイツ 内密出産制度」でGoogle検索をすると、フランスとドイツの「赤ちゃんポスト」、匿名出産制度、内密出産制度について調査したPDFが三件見つかったので少しだけ読みましたが、どれも「子どもの出自を知る権利」を侵害することについては触れているものの、子が生涯苦しむという具体的な問題については言及していませんでした。
私もF爺さんのブログ記事を読んで初めて知りましたが、もしこれらのPDFだけを読んでいたら、重要な問題だと気づくには時間がかかっていたと思います。
とはいえ、一度気づけば大半の人が容易に想像出来ることだと思います。
慈恵病院は、匿名出産を望む妊婦とは何度も直接対話をしているでしょうが、その一方で、日本にいながら匿名出産制度で生まれて苦しんでいる人と会話する機会を得ることは中々難しいでしょうから、この問題について意識が向きづらくなっている可能性がある様に思います。
*****
F爺の返信
#####
「883s」さん
お知らせ、ありがとうございます。F爺のパソコンからは、コメントに
貼ってあるURLをクリックして全文が読めました。環境によって
反応の違うことは、時々ありますね。
>慈恵病院は、匿名出産を望む妊婦とは何度も直接対話をしているでしょうが、
その一方で、日本にいながら匿名出産制度で生まれて苦しんでいる人と
会話する機会を得ることは中々難しいでしょうから、
この問題について意識が向きづらくなっている可能性がある様に思います。
【慈恵病院は、匿名出産制度で生まれて来て苦しんでいる人と対話する
機会が無かったため、匿名出産のもたらす悲劇の存在に未だに意識が向いていない】
可能性は、確かにあると思います。
慈恵病院に
【妊婦の救済のために匿名出産の便宜を図ることは、一方では生まれた子への重大な人権侵害でもある】
という事実を知らせる手立ては無いものでしょうか。
#####
ここまでの纏め
第一問には、皆様が賛成のご意見。但し、「諸手を上げて」というわけではない。
第二問にも、皆様が「正しくない」と賛成。
ところが、「883s」さんからの三通目のコメントが届きました。
【慈恵病院は、最初、熊本法務局戸籍課から「分娩に立ち会った医師からの[父母の氏名の無い出生]届け出の受理を、市役所が断った場合、職権記載で何らかの対応はできる」との解答を得ていたそうだ】
→【そのため実行することにした後で問題があるらしいと分ったけれども、突き進むことにしたらしい】
とのことです。
第二篇に続きます。