「痛感する」や「感涙にむせぶ」から可能動詞の派生は可能か

今日の二本目の記事です。

前置き

当ブログの記事〈「□□ておられる」は誤用敬語〉のコメント欄で「脱線男」さんと交信中に、
「痛感する」
という動詞の誤用を指摘して差し上げました。

返信コメントと見えるものが着信しましたが・・・それまでとは異なるIPアドレスからの送信だったため非表示のままで待機することにし、ご本人であることの確認をお願いするべく、メール交信に切り替えました。まだご返事は、いただいておりません。

問題は、
【可能動詞の派生には条件がある】
ことの認識不足でした。

F爺の言うべきことは決まっているので、ご返信を待たずに今日の記事にします。

本文

可能動詞とは

「読む」から派生する「読める」「読むことができる」
「書く」から派生する「書ける」「書くことができる」
「食べる」から派生する「食べられる」「食べることができる」
「説明する」から派生する「説明できる」「説明することができる」
などが可能動詞(*)です。

(*)「あり得る」「存在し得る」なども可能動詞の一種ですが、派生の仕方も語義も異なるため、この記事では扱いません。

派生の条件

「読める」「読むことができる」「書ける」「書くことができる」「食える」「食べられる」「飲める」などの形態の可能動詞は、ごく僅かの例外はありますが、原則として
【意図して行なう動作を表わす動詞からしか派生しない】
のです。

少数の例外については、後日、別に記事を立てます。

　可能動詞の否定形の意味

例えば、意図して行う動作を表わす動詞「読む」から派生した可能動詞「読める」の否定形の「読めない」という形態は、
「読む能力が無い」
「読むには暗すぎる」
「読みたい本が買えないし借りることもできない」
「読むことを禁止されている」
「判読できない」
「読み始めたが、あまりにも酷い内容なので読み続ける気にならない」
などの状況を表わします。

誰が意図するわけでもない「雨が降る」「氷が張る」などから「読める」「読むことができる」と並行した形態の可能動詞が派生することはありません。

「痛感する」や「感涙にむせぶ」の場合

何かを「痛感する」や何かで「感涙にむせぶ」は、「意図して行なう動作」ではありません。

「痛感する能力が無い」とか「感涙にむせぶ能力が無い」なんていう人が仮に実在するとしたら、人間性を喪失させる特殊な精神障碍を疑わせます。

同様の動詞の例を探してみてください。たくさんあります。面白いゲームですよ。