不偽善戒

火狐さん

お待たせしました。先日のブログ記事「佛教の食物禁忌」にいただいたコメントでのご質問にお答えします。
(但し、これを柱の一つとする「新しい無神倫理体系の創立」は、まだまだ先のことです)

一部の菜食主義者を例に挙げます。

「動物愛護精神に基づく菜食主義」や「不殺生戒に基づく菜食主義」を主張する人が革靴を履いていたり、絹のスカーフを首に巻いていたり、蜂蜜を食べたり、ゴキブリ退治のために殺虫剤を使ったりすることがあります。

牛や羊を屠畜しなくては、皮革製品は出来ません。繭(まゆ)に入っている蚕(かいこ)を殺さなくては、絹糸は取れません。蜂を一匹も殺さずに蜂蜜を採集することも出来ません。「害虫」と分類される虫も命ある動物です。

屠畜する役目や虫を殺す役目を他人に押し付けて自分はその成果だけを享受しながら「私は殺していない」と主張するのは、自分が直接手を下すよりも狡(ずる)いことです。

口にする言葉とは裏腹に、この人たちは動物愛護をしていないし、不殺生戒を守ってもいません。F爺は、これを「偽善」と呼びます。菜食するのは自由ですが、論理の破綻した「理由」は、引っ込めてもらいたいと思います。

「健康のために菜食主義に切り替えた」と言う人が喫煙をやめないことがあります。口にする言葉とは裏腹に、この人たちは自分の健康にも、副流煙を吸わされる周囲の人の健康にも、害を与えています。これも、「立派そうに見える理由を掲げているが、論理が破綻している」という意味で偽善です。

以上を纏めると、「辻褄の合わないことを言わないし、しないようにする」(*)のが不偽善戒です。

(*) あらゆる場面を想定しなかったために論の進め方に誤りがあったと気付くことがありますが、誤りは、認識した時点で考え直して訂正すれば良いのです。訂正を拒否したら、不偽善戒を破ったことになります。

一つの例だけではまだまだ解りにくいかもしれませんね。他の例も考えておきます。