ミニマル・ペアって何 ?
- 2015/05/24
- 20:09
(記事の末尾に追記があります)
言語学の基本である音韻論・音素論の術語にカタカナ語の「ミニマル・ペア」というのがあります。英語の「minimal pair」の転写です。フランス語では「paire minimale」と言います。文字通りの意味は、「最小の対(つい)」。何の「最小対」なのか、門外漢には分かりませんよね。
でも、音韻論・音素論の術語だ・・・と聞くと、非常に勘の良い人には見当が付くかもしれません。
「音素一個だけの違いで、または特定の音素一個の有無によって、区別の出来る語の対(つい)」のことです。
例えば英語では
「rice /rais/ (稲、米、飯)」と「lice /lais/ (二匹以上の虱(しらみ))」
「mouse /maus/ (二十日鼠(はつかねずみ))」と「mouth /mauθ/ (口)」
「best /best/ (最善の、最上の)」と「vest /vest/ (チョッキ)」
「hate /heit/ (憎む)」と「eight /eit/ (八、八つの、八匹の・・・)」
などが「ミニマル・ペア(最小対)」です。
日本語では
「滓(かす)/kasɯ/」と「ガス/ɡasɯ/」
「月/tsɯki/」と「好き/sɯki/」
「出る/derɯ/」と「照る/terɯ/」
「花/hana/」と「穴/ana/」
などが「ミニマル・ペア(最小対)」です。
ところで、この「ミニマル・ペア」、どうせ音韻論・音素論の専門家しか使わない術語で文脈を見れば意味がはっきりするものなら、漢字書きで「最小対」と言って良いはずです。少なくとも「最小の」何かであることと「一対の」何かであることが初めて見てもすぐに分かるだけ、初心者に親切です。
F爺・小島剛一は、翻訳の僅かな手間暇を惜しんだカタカナ語「ミニマル・ペア」の代わりに漢字で書いて半分だけでも意味の見当の付く「最小対」を用いることを提唱します。
言語学畑の方々、間違っても「ミニマル・ペアが術語として定着しているから・・・」とはおっしゃらないでください。既存の語を批判した上での新語提唱は、定義からして、「すでに定着している語に対する反論」なのです。
追記 2018年11月23日
「葉山の庭師」さんから、
ブログ記事〈日本語・音韻論(2)「ん」(前)〉にお寄せくださった三通目のコメントで、
「最小対」という用語が
【『ラルース言語学用語辞典』(大修館書店, 1980, p.177)】
に載っているとのお知らせがありました。
この記事を掲載した時点でウェブ検索した時には「最小対」という文字列が全く見つからなかったため、「新語を提唱した」つもりでおりました。調査不十分による間違いがあったわけですが、この記事は、追記を施した形で保存します。F爺が独自に考案した事実に変わりはありませんから。
言語学の基本である音韻論・音素論の術語にカタカナ語の「ミニマル・ペア」というのがあります。英語の「minimal pair」の転写です。フランス語では「paire minimale」と言います。文字通りの意味は、「最小の対(つい)」。何の「最小対」なのか、門外漢には分かりませんよね。
でも、音韻論・音素論の術語だ・・・と聞くと、非常に勘の良い人には見当が付くかもしれません。
「音素一個だけの違いで、または特定の音素一個の有無によって、区別の出来る語の対(つい)」のことです。
例えば英語では
「rice /rais/ (稲、米、飯)」と「lice /lais/ (二匹以上の虱(しらみ))」
「mouse /maus/ (二十日鼠(はつかねずみ))」と「mouth /mauθ/ (口)」
「best /best/ (最善の、最上の)」と「vest /vest/ (チョッキ)」
「hate /heit/ (憎む)」と「eight /eit/ (八、八つの、八匹の・・・)」
などが「ミニマル・ペア(最小対)」です。
日本語では
「滓(かす)/kasɯ/」と「ガス/ɡasɯ/」
「月/tsɯki/」と「好き/sɯki/」
「出る/derɯ/」と「照る/terɯ/」
「花/hana/」と「穴/ana/」
などが「ミニマル・ペア(最小対)」です。
ところで、この「ミニマル・ペア」、どうせ音韻論・音素論の専門家しか使わない術語で文脈を見れば意味がはっきりするものなら、漢字書きで「最小対」と言って良いはずです。少なくとも「最小の」何かであることと「一対の」何かであることが初めて見てもすぐに分かるだけ、初心者に親切です。
F爺・小島剛一は、翻訳の僅かな手間暇を惜しんだカタカナ語「ミニマル・ペア」の代わりに漢字で書いて半分だけでも意味の見当の付く「最小対」を用いることを提唱します。
言語学畑の方々、間違っても「ミニマル・ペアが術語として定着しているから・・・」とはおっしゃらないでください。既存の語を批判した上での新語提唱は、定義からして、「すでに定着している語に対する反論」なのです。
追記 2018年11月23日
「葉山の庭師」さんから、
ブログ記事〈日本語・音韻論(2)「ん」(前)〉にお寄せくださった三通目のコメントで、
「最小対」という用語が
【『ラルース言語学用語辞典』(大修館書店, 1980, p.177)】
に載っているとのお知らせがありました。
この記事を掲載した時点でウェブ検索した時には「最小対」という文字列が全く見つからなかったため、「新語を提唱した」つもりでおりました。調査不十分による間違いがあったわけですが、この記事は、追記を施した形で保存します。F爺が独自に考案した事実に変わりはありませんから。