ア行のウとワ行のウ
- 2015/05/25
- 18:38
粉雪さんがブログ記事「いろは歌」にお寄せになったコメントでのご質問の最後の部分にお答えします。
まずはコメントの該当部分を引用します。
*****
>/u/と/wu/を区別する言語というのはあるのでしょうか? 英語の(・・・)woolのIPA表記では(・・・)/w/が入るようですが(・・・)
*****
日本語の「ア行のウとワ行のウ」の間には区別が全くありません。また、フランス語のように、音素として/w/を具えていても/wu/という組み合わせの存在しない言語もあります。しかし、他のどの言語でも必ずそうだとは限りません。
英語の例
「母音音素/u/の前の子音音素/w/の有無で最小対(さいしょうつい) を成す語(*)」の例が、英語にあります。
(*)「最小対」は、F爺・小島剛一の新造語です。音韻論・音素論の術語で「 音素一個だけの違いで、または特定の音素一個の有無によって、区別の出来る語の対(つい)」を指します。
「最小対」は、フランス語の「paire minimale」、英語の「minimal pair」の訳語です。日本の言語学界ではカタカナ転写だけをして
「ミニマル・ペア」と呼んでいますが、初心者には何のことか分かりません。言語学の中でも音韻論・音素論の術語としてしか用いない
という制約があるのですから、日本語訳は単純に「最小対(さいしょうつい)」で構わないのです。
「oozy /u:zi/」(*)と「woozy /wu:zi/」(**)
(*)「oozy」と綴る語が二つあります。
(1) 動詞のooze「じくじく流れ出る」から派生した形容詞「じくじく沁み出る」
(2) 名詞のooze「海底や川底の軟泥」から派生した形容詞「どろどろした」
(**)「woozy」: 俗語で「ぼんやりした」という意味の形容詞です。
英語には、他にもwolf /wulf/ (狼)、wood /wud/ (森、木材)、wool /wul/ (羊毛)など、母音音素/u/の前に子音音素/w/の現れる語が多数あります。英語人が/u/と/wu/を混同することはありません。英語を異言語として習う人も、少し慣れれば、聞き取れるようになります。
余談
日本語人が英語の/w/を発音する時には、現代日本語の「ワ、ウィ、ウェ、ウォ」の子音よりも唇の円めが遥かに強いことを意識しなければなりません。同じ記号を使っていても、日本語の/w/には、唇の円めは殆どありませんし、無くても構わないのです。音素記号も国際音声字母も便宜的な物です。「記号が同じだから同じ発音に決まっている」と思ってはいけないのです。
まずはコメントの該当部分を引用します。
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>/u/と/wu/を区別する言語というのはあるのでしょうか? 英語の(・・・)woolのIPA表記では(・・・)/w/が入るようですが(・・・)
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日本語の「ア行のウとワ行のウ」の間には区別が全くありません。また、フランス語のように、音素として/w/を具えていても/wu/という組み合わせの存在しない言語もあります。しかし、他のどの言語でも必ずそうだとは限りません。
英語の例
「母音音素/u/の前の子音音素/w/の有無で最小対(さいしょうつい) を成す語(*)」の例が、英語にあります。
(*)「最小対」は、F爺・小島剛一の新造語です。音韻論・音素論の術語で「 音素一個だけの違いで、または特定の音素一個の有無によって、区別の出来る語の対(つい)」を指します。
「最小対」は、フランス語の「paire minimale」、英語の「minimal pair」の訳語です。日本の言語学界ではカタカナ転写だけをして
「ミニマル・ペア」と呼んでいますが、初心者には何のことか分かりません。言語学の中でも音韻論・音素論の術語としてしか用いない
という制約があるのですから、日本語訳は単純に「最小対(さいしょうつい)」で構わないのです。
「oozy /u:zi/」(*)と「woozy /wu:zi/」(**)
(*)「oozy」と綴る語が二つあります。
(1) 動詞のooze「じくじく流れ出る」から派生した形容詞「じくじく沁み出る」
(2) 名詞のooze「海底や川底の軟泥」から派生した形容詞「どろどろした」
(**)「woozy」: 俗語で「ぼんやりした」という意味の形容詞です。
英語には、他にもwolf /wulf/ (狼)、wood /wud/ (森、木材)、wool /wul/ (羊毛)など、母音音素/u/の前に子音音素/w/の現れる語が多数あります。英語人が/u/と/wu/を混同することはありません。英語を異言語として習う人も、少し慣れれば、聞き取れるようになります。
余談
日本語人が英語の/w/を発音する時には、現代日本語の「ワ、ウィ、ウェ、ウォ」の子音よりも唇の円めが遥かに強いことを意識しなければなりません。同じ記号を使っていても、日本語の/w/には、唇の円めは殆どありませんし、無くても構わないのです。音素記号も国際音声字母も便宜的な物です。「記号が同じだから同じ発音に決まっている」と思ってはいけないのです。